真夜中の恋人54

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 朝から降っていた雨は上がったが、木立を抜ける風は少し冷たかった。
 京助はエントランス横の壁に凭れて、やがて現れるだろう千雪を待った。
 二十分ほど経ったろうか、バイクの音が近づいてきた。
 黒のHONDAの一一〇〇cc。
 小回りが利くし、駐車スペースも取らないという理由で、千雪は大学一年の時に買って乗り回している。
 皮のジャケットとジーンズに短めのライディングシューズを履いた千雪は、エントランス前にバイクを停めると、ヘルメットを下げて螺旋階段を上がった。
 腕組みをして京助は一応千雪が出てくるのを待つことにした。
 一時間だけ待ってやる。
 一時間過ぎたら、乗り込んでやるからな。
 チクショウ、立派なストーカーだ。
 こんな器量の狭い男に寄って来たがる女どもの気が知れねぇぜ。
 京助は自虐的な笑いを浮かべる。
 そのうち、車が二台続けて駐車場に入り、四人ほどがエレベータに乗った。
 今夜は主演俳優を紹介するから来いと千雪は呼ばれたのだ。
 本当は工藤に任せてしまってもいいのだが、鬱々として部屋に閉じこもっているよりはいいだろうと、ちょうど雨も上がったので千雪はバイクでやってきたのである。
「うちの所属俳優の志村嘉人。二人の主演のうちの若い方の弁護士役だ」


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