真夜中の恋人55

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 志村嘉人はつい半月ほど前にこのオフィスに入ったという若手俳優だ。
 日本人離れしたイケメンだが、落ち着いていて穏やかだ。
 小劇団に所属し、テレビドラマにもちょこちょこ出ていたらしい。
 劇団の主宰と仲がいいという工藤のMBC時代の同僚、下柳から一度みてみろと言われ、舞台を見た工藤がオフィスにこないかと誘ったのだと、万里子が説明してくれた。
「ホストもやってたんですって。もてたわよねぇ、きっと」
「余計なことは言わなくていい。隣がマネージャーの小杉だ」
 小杉はもともと志村の所属していた劇団員だったのだが、そのうちマネジメントの方が向いていると、主に志村のマネジメントをやっていたという。
 マネージャーとして志村と一緒に来ないかと誘ったところ、二つ返事で来ることになった。
 なかなか社員が入ってくれない青山プロダクションとしては有り難かった。
 案の定、小林千雪と聞くと小杉などのけぞって驚いてくれたが、志村も小杉も真面目そうな雰囲気で、華やかなスキャンダルにまみれた業界にもこんな人たちもいるのだと、千雪はあらためて思う。
 正式なキャスティングリストやスポンサーリストを渡されたが、キャスティングに並んでいるのは往年の名優から千雪でも知っているような知名度の高い俳優陣だ。
 スポンサーも財界のトップクラスの企業名が並んでいる。
「鴻池産業やフジタ自動車とか並んでますけど、工藤さんて案外すごい人やったんですね」
「ツテだ。金だけは出してくれるからな」
「ホンマに大丈夫なんですか? 俺の小説なんかで、コケても知りませんよ?」
「俺がそんなヘマをするか」


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