真夜中の恋人56

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 すごい自信だが、千雪の胸の内には一抹の不安がよぎる。
 だが、この際千雪の不安などこの男にはどこ吹く風といったところだ。
「あとは、お任せしますので、よろしくお願いします」
 千雪はヘルメットを手に立ち上がった。
「あら、千雪さん、バイクなの? じゃあ、工藤さん、車変えた?」
 万里子が小首を傾げて工藤を見た。
「まだ動くものを変える必要はないだろ」
「ふーん、じゃあ、志村さんの? ポルシェのターボ」
 志村は、ああ、そういえば、と頷く。
「あれ、最新のヤツ? そんなものを買えるような身分じゃないですよ」
 何となく気にかかるものがあったが、千雪はオフィスを出て階段を降りる。
 ヘルメットを被ろうとしたその時、いきなり腕を掴まれた。
 えっ、と思う間もなく、腕を取られたまま歩き出す。
「京助! やっぱりお前か! 会わんて言うたやろ!」
「たまたま、通りかかったんだ。メシ食うぞ、まだだろ?」
「何がたまたまや! 駐車場に置いてる車、お前のやろ!」
 とはいえ、京助と会わなかった数日、何やら物足りなさを感じていた千雪は、それ以上文句を言うのをやめた。
 目についたカフェレストランに京助は千雪を連れて入っていく。
「他に欲しいものあるか?」
 パパパっとメニューから二人分のコース料理を選んでから、千雪に尋ねた。
「ない」


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