真夜中の恋人63

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 ところが速水は顔を近づけて、声を落とした。
「透けるような肌ってのを初めて見た気がしたぜ。あの恐ろしいような色香で、ありゃ、相当、男くわえ込んでるんじゃねぇの? なかなかおさまりがいいし、可愛がってやったら、感極まった声で泣いて………」
 何が起こったのか速水が悟ったのは、自分の体がふっとんでしばしあってからだ。
「きゃあ!」
 通りかかった女子大生が盛大に叫んだ。
「どうしたの!? 京助さん! 速水くん!!」
 騒ぎを聞いて、コーヒーを取りに行っていた文子が慌てて駆けつけた。
 その頃、二限目の講義のあと教授に質問があって時間をくってしまった千雪は、三限目が始まる前に図書館に行くつもりもあり、カフェテリアで手早く昼を済ませようと向かっていた。
 夕べは帰ってから原稿に取り掛かったのだが、速水のことがどうにも我慢ならず、イラついて全く進まなかった。
 呆れるというより、そんな風にしか考えられない男が哀れにさえ思えた。
 それが京助の友人というのだから、京助も気の毒な気がしないでもない。
 いいや! 元はと言えば、京助が悪いんや!
 あんなヤツにカギなんか渡したままにして!
 あのヤロウ! 人のことスキものの淫乱男みたいに!
 自分がそうやから言うて、人のことまで同じやと思うな!


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