真夜中の恋人73

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 二年の時、告られたことは、先日文子が話すまで、千雪は心の隅に追いやっていた。
 実際、告られたのは桐島だけではないし、それ以上に学校だけでなく家までやってきて待ち伏せされたり、まるでアイドルの追っかけのようなことをされたりで、困惑した千雪がいい加減にしろと怒鳴ったことも一度ではない。
 その時は引き下がるのだが、しばらくするとまた同じことを繰り返す少女たちには手を焼いた。
 それでも研二がそばで睨みを効かせてくれている時は近寄ってこなかったのだが。
 今となってはそれらも高校時代の思い出といえるのか。
 東京に出てきてからの、黒渕眼鏡にダサい見てくれの理由は、男に襲われそうになったからだけではなく、女の子に家まで追いかけられたということのトラウマも多分にある。
 別に三田村を笑わせるためにやっているわけではないのだ。
 そういえば、どうしてあの思慮深そうな文子が桐島のそんな話を人前で話したのだろう。
 自分のことならいざ知らず、友人の振られた話など。
 腑に落ちなかったのはそのことだ。
 その時、速水が笑うのが見えた。
 千雪はすくと立ち上がった。
 待ち合わせだとボーイに告げて、二人のテーブルへ桐島の後ろから近づいた。
「Mr.Hayami!」
 京助の『真夜中の恋人』が突然現れたことに、速水は一瞬呆けた顔で千雪を見上げた。
「You said you love me. but, you go out with such a woman! What a no-class heel!」


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