真夜中の恋人76

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 何か含みのあるような三田村の言い方に、千雪は怪訝な顔をする。
「やから、こうして会うてるやろ? 今。まあ、飲めや」
 ごまかされた気もしないでもないが、千雪は三田村がグラスに注いだワインを口に持っていく。
「そういえば、ドイツで会うたん? 桐島と」
「ああ、そ。フランクフルトのドイツ支社に最近まで二年ほどいたんやけど、去年、桐島がリサイタルで来てて、訪ねていったんや」
「それでつき合い始めたんか。よかったやん。二度目は振られなくて」
 実は三田村が桐島に告って振られたと、一時噂になっていたのだ。
 すると三田村がムッとした顔をする。
「お前が言うな、お前が! そもそも俺が振られた原因は彼女、お前が好きやったからやで?」
「今さらそんな昔のこといつまでも」
「今さらなもんか、桐島、今でもお前のこと好きやし」
 サラダの海老を口に運ぼうとして、千雪は三田村を睨む。
「アホ、言わんとき。もう、酔うたんか?」
「それだけやない。もっといろいろ複雑なんや」
「複雑て?」
 すると難しい顔で三田村が千雪に向き直る。
「お前、今、誰とつき合うとるん?」
 いきなりな質問に、千雪は戸惑う。
 誰とと言われれば、京助しかいないだろう。
 だが、ここで口にするのを憚られるのは、相手が男だからだ。


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