真夜中の恋人81

back  next  top  Novels


 今は昔。
 そんなことも? 高校時代の思い出になっている。
「何か、随分、年くった気ぃする。高校時代、時々戻りたいなんてな……」
 ボソリ、と千雪は口にしてワインを空ける。
「そうやね………」
「二人とも何をしんみりしとんね、それもこれもあっての今やろ」
 三田村がフンと鼻息も荒く言い切った。
「そうや、私、小林くんに会うたら、絶対聞きたい思てたことがあるんよ」
 桐島が意を決したように千雪を見つめた。
「卒業式の日、ボタン誰にあげたん?」
「え…………」
「女の子らの間でもう、大問題になってたんよ。いつの間にか小林くんの第二ボタンなくなってたて。それが不思議なことにてっきり江美子さんにあげたんやと思て聞いたら、江美子さんも知らん言うし。江美子さんやったら、小林くんとのこと誰もが認めてたし、もろたのに嘘つく理由ないでしょ?」
 妙なところで妙なことを突っ込まれ、千雪はしばし思案した。
「あれは………ボタン欲しい女の子に襲われるぞとか脅かされて、あらかじめ自分で取ったんや。まさかとは思うとったけど、他のボタン二つもいきなり毟り取られたんやで?」
「ふうん。ほんまなん?」
 まだ疑いの眼差しで見つめられて、千雪は思わず大きく頷いた。
 本当のことはもう誰にも話すことはないだろう。
 あのボタンは俺が一番欲しかったんやと。


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ