真夜中の恋人88

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 フフッと笑う万里子に、三田村は鼻息も荒く断言する。
「テレビのデビュー作の『はじめの一歩』からずっと観てました」
「やだ、恥ずかしい、そんな古い話!」
 恥ずかしいと言いながら、万里子も熱心なファンに満更でもないようすで、二人はしばし万里子の出演したドラマや映画の話で盛り上がった。
「ただ今戻りました」
 そこへ弁当やデザートなどコンビニで調達して、マネージャーの菊池が戻ってきた。
「あ、小林先生、お世話様です」
「こちらこそ。え、食事まだやったんですか?」
「ええ、万里子さん、あんまり外食とかの気分じゃないということで。ちょっとここのところいろいろ騒がれてましたから、静かにオフィスにいるのがいいとおっしゃって」
「こうみえて意外と繊細なのよ」
 フフフと笑う万里子に、三田村が慌てた。
「うっわ、すみません、俺、何も知らんと騒いでしもて」
「あら、いいの。楽しかったわ、三田村さん、小林先生も何か召し上がる?」
「これ見よがしに先生はやめてんか。それより、急にお邪魔してもて、そろそろ帰るで、三田村」
 そう言って千雪が立ち上がりかけた時、オフィスのドアが開いた。
 何気なく顔を上げた千雪は、入ってきた予期せぬ人物に驚いた。
「失礼ですが、どちら様ですか?」
 即座に菊池が男の前に立った。
「用があるのはそこにいる、そいつにだ」


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