真夜中の恋人90

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 工藤はしばし間を置いて口を開く。
「タレントとはちょっとばかし、違うが………」
「悪いんやけど、速水さん」
 二人の間に割って入ったのは三田村だ。
「あんたが、せっかくのデートをぶち壊されて? 恥かかされて怒っているのはわかるけど、今、桐島とつき合ってるのんは俺やねん」
「え………」
 今度はさすがに速水も一瞬言葉がなかった。
「なるほど、それは知らなかったとはいえ、すまなかった。桐島さんのことはそもそも俺の一方的な話だから仕方ないとしよう。だが、そこの彼に、彼女の前で俺を侮辱するような発言をしたことに対する弁明をしてもらうのとは別の話だ」
 この男が皮肉屋で性格は曲がりくねっていそうな気がすると思ったのは確かだが、執念深くて立ち直りは早いというのもつけくわえておこうなどと思いながら、千雪は立ち上がる。
「あんた都合よう自分の言うたことは覚えてへんらしいな。俺はちょっとしたお返しをしただけやし? 目ぇ剥いて俺を追い掛け回すようなことやないんちがう? ほんま、京助のダチだけのことはあるわ」
 苦々しい表情を浮かべる速水を見て、三田村がハハハと笑う。
「こいつに何言うたか知らんけど、こいつに睨まれたら恐ろしことになりまっせ? 関わり合わん方がええ思いますけど?」
「俺がまるで極悪非道みたいなこと言いなや。工藤さんやあるまいし」
「おいおい、こっちにとばっちりをよこすなよ。先生、京助のオトモダチだって?」
 軽く千雪の憎まれ口をたしなめて、ことの成り行きを面白そうに眺めていた工藤がニヤリと笑う。
 どうやらここにいる者みんなが千雪のシンパで、自分にはここから先へ一歩も踏み込めないようだと、速水は悟る。


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