真夜中の恋人92

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 結果、確かに工藤は広域暴力団トップの血縁にあたるものの、母親まで遡って縁を切っているし、双方の行き来は全くない、工藤は横浜の資産家だった曽祖父の遺産を相続してこの会社を興したという。
 認めたくはないが、現時点では自分の敗北を認めざるを得ない。
「今日のところはひきあげます。お騒がせしました」
 それを聞いて、ええ加減、帰れやと心の中で文句を言っていた千雪は少しほっとした。
 千雪を一瞥し、踵を返して速水が開けようとしたドアが、新たな訪問者によって開いたのはちょうどその時だ。
「夜分に申し訳ない、あ、千雪くん、いたいた!」
 傍を通り抜けてあたふたとオフィスに走りこんだその男に、速水は見覚えがあって振り返る。
 ………千雪くん?
「携帯は切ってるし、家にもいないし、ひょっとしてこっちにいるかと電話したらいるっていうから。工藤さん、すみません、ちょっと千雪くんを借りたいんです。緊急で!」
 ガタイの大きさに似合わない、甘めのマスクが半泣き状態で、渋谷が千雪に駆け寄った。
「たまには捜査一課だけで事件解決してみたらどうだ? あ? 渋谷」
「皮肉らないでくださいよ、工藤さん。上は頭の固いやつらばっかで、だからいっそ、千雪くんにうちに入ってくれたらって言ってるんですけどね」
 思い切り千雪を凝視する速水と千雪はつい目が合ってしまう。
「何で、こういう展開になるんや」
 誰にとはなく、ボソリと千雪は毒づいた。


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