真夜中の恋人93

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「千雪さんに言われたように、畑中検事に頼み込んだら起訴を踏みとどまってくれて、再捜査の猶予をもらったんですが、明日が拘留期限で、明日までに何も出なければ検事にも起訴すると言われてて」
 ひそひそと話しているつもりのようだが、興奮しているせいか渋谷の声は幾分声高になっている。
「何や、千雪、検事になるんか?」
 速水にも千雪だとバレたらしいと見ると、三田村が能天気にも茶々を入れる。
「なるか、あんな堅苦しいもん」
「すみません、それで」
 さすがに声が大きかったかと恐縮した渋谷は囁くように言った。
「被害者の布団の裏側にも血痕があったことが気になると言ってましたよね? ひょっとしてそこに何かがあって、それを被疑者が盗んだんじゃないかって。それについていろいろ聞き込みをしたんですが……」
「とにかく出ましょか」
 千雪は渋谷を促して、オフィスを出て行く。
「じゃあ、俺も、この辺で、お騒がせしました」
 三田村はオフィスの面々に言ってから、ドアの傍に立っている速水に声をかけた。
「帰らはるんやないんですか? 速水さん」
 しばし呆然と、自分の傍を通って外に出て行った千雪を見送った速水は、ようやく我に返ったように三田村を見た。
 中にいた面々に会釈をすると、速水は三田村に続いてオフィスを出た。
「一体全体、どういうことだ………つまり彼は……」


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