お正月10

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 京助が風呂からあがる頃には、聖護院大根を使ったぶり大根が少し冷めて味が染み、並べられた海老しんじょと大根の餡がとろりとして見るからに美味そうだ。
 ブロッコリー、人参、セロリなどをさっと茹でたサラダに、デリカテッセンで買ってきたきのこなどのマリネ、チキンを使ったリングイネなど、千雪が食べられないものはない。
 それに加えて、黒豆、栗きんとん、昆布巻き、蒲鉾、数の子、伊達巻、筑前炊き、レンコン、海老、テリーヌ、ローストビーフなど、小夜子が千雪に持たせたお節を並べるとまた豪華になる。
 買ってきた酒を熱燗にして、ようやく京助が座り、二人で酒を酌み交わす。
「美味いわ、このぶり大根」
「鈴子さんに教わったのさ。キッチンに使ってない圧力鍋あっただろ」
「ああ、ひょっとしてあれか? 早う料理できるて、父が買うてきたはええけど、お母ちゃん指火傷しよって、以来、危ないから使うなて、仕舞い込んだやつ」
 京助は笑った。
「とんでもないお嬢だったみたいだな、うちの母とどっこいか?」
「やから、かなりドジっぽかっただけや。作るのはトロかったけど、それなりに美味かったで? まあ、レパートリーはそうなかったけどな」
「芸術家だから、それくらいでいいさ。そういや、この正月のうちに、絵の方確認しておけよ」
 そういえば、いつの間にか三田村と京助が結託して原夏緒の作品展を勝手に計画していたのだ。
 夏には京助の兄の紫紀に、作品展会場となる九条美術館の館長、九条祐紀を紹介されたが、千雪が夏緒に生き写しだと、祐紀の歓迎ぶりは相当なもので、本当のところ千雪は閉口した。
「おい、あいつに気をつけろよ、危ねぇぜ」
 早速京助が耳打ちするのに、千雪は肘鉄をくわせた。
 秋に開催予定だが、ちょうどその頃予定していた海外の作品展があったのだが、貸出してくれるはずの美術館の要望と噛み合わず、進展していなかった。


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