お正月16

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 横浜の大学を出た辻も上京組の一人で、千雪もついこの夏まで会うこともなかったのだが、今は車好きが高じて横須賀で中古車のディーラーをしている。
「免許取ったよって、中古でも買うたろ思てるいうとったやろ」
「もちょい、早よ声かけとってくれたらな。京助が、俺の誕生日祝いやいうて、今朝、新車使わしてくれるて、鍵くれよってん」
 そう、今朝のことである。
 チャイムが鳴るので誰がきたかと思ったら、京助の馴染のディーラーが手を回して京都に新車を届けてくれた、というわけだ。
「誕生日祝いて、居間のおかあちゃんの絵、買うてくれたやないか」
 玄関の前に停められた高級外車に喜ぶより、ムッとしながら千雪は文句をたれた。
「だから、これは俺が買ったんだ。ただ、お前も使っていいと言ってるだけだ。車庫もいつものとこの横、借りといたぞ」
 はあ、と溜息をついたものの、今さら京助のやることにイチイチ文句も言っていられない。
 車をくれるなどと言ったら、千雪が怒るのはよくわかっているので使ってもいいなどと言う。
 このやろう! 人の性格見透かしよってからに!
 暮れの三十日が千雪の誕生日なのだが、いつもせわしなく、千雪自身も忘れてしまっていたくらいなのだが、今朝起きたらまず居間に母の絵が飾ってあった。
「誕生日祝いだ」
 『向日葵とこども』と題した絵は三十号で群れている向日葵の後ろに小さな子供が三人描かれている。
 昔、個展をやった時にどこぞの実業家が気に入って買ったと聞いていたが、その実業家は会社の倒産で絵を手離し、巡り巡ってあるコレクターの手に渡ったという。


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