お正月2

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 実際刷り上がった記事は真面目でしっかりしたものになっていた。だが、お蔭でまた周りが騒がしくなり、千雪はアパートの電話線を引っこ抜き、イラつきながらミステリー雑誌の連載原稿をあげることになった。
「もういい加減口聞いたって下さいよ、先輩ぃ」
 翌日のイブから大学は冬休みという昼、仕事詰めで瞼が重くて目を開けているのも億劫な千雪がコーヒーを飲んでいる前に、ウザイ男が座った。
「あの、先輩、理紗子がお礼にぜひ白馬のホテルに招待したい言うてるんですが。鬼のような年末進行切り抜けて、仲間とクリスマスパーティやるんで」
 千雪はメガネの奥から佐久間を睨みつける。
「もちろん最高にええ部屋を調達してありますよって」
「断る」
「んなこと言わんと、ほんまに先輩には無理なことお願いしたし、けどお蔭さんで売り上げすごかったって、彼女えろ感謝してますのや」
「感謝なんかいらん、邪魔せんといてくれたらな」
 そっけなく返して、千雪はコーヒーを飲みほした。
「おい千雪、三十一日までには原稿あがるんだろうな」
 横からテーブルの上に紙コップのコーヒーが置かれ、どっかと大きな男が座った。
「二十九でもギリギリやからな、三十の朝から俺は寝る。邪魔せんなや、京助」
「フン、俺も論文にかかりきりだ。殺人鬼がつまらん事件が起こさないでくれたら、完璧なんだが。とにかく、三十一、午後一の新幹線だからな」
 それだけ言うと京助はコーヒーを飲みほし、紙コップを潰しながら席を立って行ってしまう。
「先輩ら、どっか行かはるんでっか?」
「あ? 別に、俺が正月京都の実家に帰る言うたら京助も行くて」
「はあ、そうなんでっか。何や京助先輩も疲労困憊気味やったな。そういえば、京助先輩、この一年、女とのゴシップあんましなかったですね~、まあ、女には相変わらず騒がれてはったけど。やっぱあの、真夜中の恋人が京助先輩の本命なんですやろか。先輩、ほんまは知ったはるんですやろ? 京助先輩の超美人の恋人」
 勘にさわるキーワードを連呼され、ガタンと千雪は立ち上がる。
「あ、先輩ぃ! もう行かはるん?」
 無論、クリスマスイブもクリスマスも京助や千雪には何の関係もなかった。


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