お正月9

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 松竹梅の豪華な花も倉永さんが生けてくれていたことを思い出す。
「おう、これで正月がきてくれそうやな」
 その花を見て、父がそんなことを呟いていた。
 母が生きていた頃は、玄関だけでなくいつもかかさずどこかしらに花があった。
 それらのひとつひとつをどうして覚えていなかったのだろうと、悔しく思うことがある。
「先に風呂でも入ってろ」
 京助がキッチンで料理を始めると、千雪は言われた通り、バスタブに湯を張って、先に入ることにした。
 大晦日というより、久しぶりののんびりした時間に、湯の中でふっと肩の力を抜いた。
 本当は京助にしたって忙しいばかりの毎日だったはずなのだが、大抵いつもデリカテッセンなどで買ってきたものだけでは飽き足りないと、何品かはきっちり作ってくれる。
「ほんまに、出来すぎやな」
 千雪が風呂からあがると、美味そうな匂いが漂っている。
「すぐ上がるから、待ってろ」
「どこで食べる?」
「居間でいいだろ」
「ほな、何用意しとったらええ?」
「皿と箸とぐい飲み、と徳利」
「わかった」
 キッチンの食器棚から皿や徳利などを取り出しながら、千雪はやっぱり京助と二人でこんな風にこの家にいることが何やら不思議な気がした。
 自分がこの家にいることは何の不思議もないのだが、京助が何故ここにいるのだろうと。
 逆を言えば、上京してからというもの京助がいなければ、ここまで一人でやってこれたかどうか怪しいものだ。
 とっくに一人暮らしを返上して、おそらく原の家に厄介になっていた可能性が大だ。
 どちらにせよ、甘やかされているのは確かだろうが。


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