かぜをいたみ 11

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 自分の作品が映像で段々具体的な形をなしてくると、とっくに自分の作品から抜け出しているのを千雪はいつも感じる。
 もはやそれは自分の作品であって、自分の作品でない、そんな気がする。
 工藤はまだ来ていないらしいし、ぼうっとするのも飽きて、千雪はスタジオを出てトイレに入った。
 自分一人しかいないらしいので、手を洗ってから眼鏡をとって、鏡を覗く。
 確かに自分の眼鏡のない顔には、そのベージュのツイードのスーツは渋すぎるかもしれない。
 クローゼットからあまり考えもせずに順番に引き出して着ているだけだ。
 ドアが開けられたので、千雪は慌てて眼鏡をかけた。
 入ってきた男とすれ違いに出ていこうとして、いきなり肩を捕まれ、驚いて男を見つめる。
「小林千雪先生だよな」
 中肉中背、度の強い眼鏡、年は自分より若いかもしれない。
「そうですが、あなたは」
 男はさらにぐいぐい千雪の両肩を掴んで壁に押しつける。
「一体、なんでうちの安西豊でなくて、大澤流なんだ? え? 親の七光で威張ってる奴なんかのどこがいいんだ? 安西が奴よりどこが劣るってんだ? え? 先生、言ってみろよ!! どんだけ金を掴まされたんだ?」
 始めは何のことだかわからなかった千雪だが、ようやく男が言っていることが分かりかけてきた。
「あなた、どなたです?」
「んなこたどうだっていい!! どんだけ出せば、よかったってんだ? え? 言えよ!」
 いい加減千雪も腹が立ってくる。
「何を勘違いしているか知りませんが、俺は原作者としての正規の報酬以外金なんか受け取っちゃいませんよ」
「とぼけてんじゃねーよ!! じゃあ、なんで安西を選ばなかったんだ?」
「キャスティングに関しては俺は一切工藤さんにお任せしてあるし、俺は安西さんより大澤さんを使えやなんて言うたこともおへん。どなたか知りまへんけど、俺に文句言うんはお門違いやないですか?」
 少々きつい言葉で千雪は言い放った。
「でけえ面するんじゃねーよ!! 三文小説家のくせに!」
「三文小説家でわるかったやんか! その三文小説家に文句つけてんのお前やんか!! 誰だか知らんけど、さっさとそこどいてんか!」
 カッときた千雪は言い返す。

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