かぜをいたみ 13

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「どうもおおきに。おかげで助かりましたわ。眼鏡、下さい」
 あくまでもシラを切り、手を延ばそうとした千雪の手から、流は眼鏡を遠ざける。
「新人どころじゃなかったってわけか……センセ……工藤がセンセを贔屓するわけだな、こりゃ。オッドロキ!! あの小林千雪がこんな超ビジンだったなんてな!」
「メガネ、返してんか!!」
 頭の痛みが殆ど消えた千雪は、きつい言葉で睨みつける。
「ヘラヘラうるさいガキが、かあ?」
 面倒な相手に知られたと千雪は思う。
「おい、何だ、こりゃ、ただのガラスかよぉ!? 一体全体この謎はどう説き明かされるんだ? 名探偵さんよ?」
「返せいうてるやろ!」
 流は千雪の手をスルリとかわす。
「こんなスクープ、滅多にないぜ? ひょっとして、仕事は工藤のベッドでおねだりしたわけ? センセ」
 ニタニタと笑いながら流は尚も言いつのる。
「それがどないした?」
 イラついた千雪は、思わず言い放つ。
 一瞬、流は口を噤んだが、すぐにまたヘラヘラ笑う。
「開き直りか? こりゃ、まいったね」
「何をしようと俺の勝手やし。吹聴するんもお前の勝手や。キャスティングだけやない、作品自体何も口挟んだこともない、何もかも工藤さんに任せているさけな。けど、工藤さんは何も言うなとは言うてない。俺がお前のこと言うたら、お前かてどうなるか、わからへんで」
 脅しには脅し、ビシッと言い切ると、千雪は流の手からメガネを取り返し、トイレを出る。
 ったく、だから嫌いなんや、業界なんか。
 ちょうどやってきた工藤を見つけたが、流のことを話すのはやめた。
 当初の目的は果たしたし、トイレで転んでしまったので帰ると言い、スタジオを後にした。
「ユキ、ママもパパもまた遊びに来てって。この間のことももうそろそろほとぼり冷めたわよ」
 アスカが追ってきて、こっそり耳打ちする。
 一ヵ月ほど前になるが、うっかりアスカを車で自宅に送ったところを、写真週刊誌に撮られたことがあったのだ。
 幸か不幸かサングラスに隠された千雪は素顔を知られることはなかったのだが。
「またそんな、ええ加減にせぇよ。それよか気いつけや。ほんま、この業界、どんなことがあるかわからへんよって」
「うん……」
 名残惜しげなアスカの向こうに、流が立っているのに千雪は気づいたが、それを無視して帰途についた。

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