かぜをいたみ 7

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「そういえば、良太、その後どうです?」
 思い切りよく千雪は話を切り上げる。
 前々から工藤の部下である広瀬良太のことを工藤に聞いてみようと思いつつ、今日までその機会がなかったこともあった。
「その後…って何だ?」
 いきなり千雪の口から出た良太という名に、工藤は内心の動揺を抑えつつ聞き返す。
「え、だって、あいつ、ヘンなやつにつけねらわれてたんでしょ?」
「ああ、そのことならもう平気だ」
 自分と良太の関係を千雪が知るはずもないのだ。
 しかも、たかが良太の名前を出されたくらいであたふたしている自分が工藤はおかしい。
「ほんならええけど…」
 チラリと千雪は工藤を見る。
 なんや、ヘンやで、工藤さん。
「さて、そろそろ帰るぞ、千雪。こっちは明日も早いんだ」
 京助の一声で座はお開きとなり、千雪は京助にせかされて店を出た。
 車はパーキングに置いたまま、工藤は浩美と研二、匠をタクシーに乗せ、自分は次の車に乗り込んだ。
 「ほならな」と別れ際に研二は千雪に笑った。
 そんな優しい眼差しに、千雪の心はまた揺れる。
 研二は研二の新しい明日へと足を踏み出したのだ。
 それなのに、まだぐずぐずと引きずっている自分が情けないと千雪は思う。
 こうして忙しい中を迎えにきてくれた京助に対しても、口では天邪鬼な言い方をしても、そんなのは裏切りに等しいようで気がひける。
 俺ってほんま、なさけないやっちゃ…
 そんなこと、余計に京助は面白くないだろうから言わないけれど。
 京助は車を拾うと、千雪を押し込むようにして、運転手に麻布を告げた。
 京助には千雪の心は手にとるようにわかっていた。
 俺だけを見ろ! 研二なんか忘れろ! 
 そう言って千雪を追い詰めれば、千雪を一層苦しませるだけだ。
 それに、あいつ、研二を俺は憎むことができない。
 いっそ憎んでしまえれば楽かもしれなかった。
 相手が工藤なら、とっくに殴り倒している。
 だが、あんなにも潔い男を、俺にはどうすることもできない。
 隣で窓の外に目を向けている千雪を見やり、心の中で京助は何度目かのため息をついた。

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