かぜをいたみ 9

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 使えなければ容赦なく切り捨てる非情さも業界では有名だ。
 にもかかわらず、彼に近づこうとするものは後を絶たない。
 女に限らずだ。
 何年か前に工藤を巡っての女同士の争いをマスコミに叩かれ、躍べないまま自殺した女優もいたことから、工藤のダーティな部分のみが強調されてきたきらいもある。
 千雪が工藤と出会った頃、工藤という男を極悪非道なやつと思い込んでいたのも、工藤があえて悪であるかのように演じていたのだと今は思っている。
 自分と同じちゆきという名の工藤の恋人が、彼との仲を親に引き裂かれて自殺したのだと、軽井沢の別荘を守っている平造老人から聞いたのは、散々工藤を人非人と罵ってしばらくたってからだった。
 少しずつ工藤に対するイメージが変わっていった。
 どうせヤクザの作った会社だ、と思っていたのだが、青山プロダクションは、工藤が母方の曽祖父母から受け継いだ財を元手に興したものだ。
 敏腕プロデューサーでもある工藤を社長に、タレントを含めても総勢十数人と会社の規模は小さいが、青山プロダクションは着実に揺るぎない地位を確保しつつある。
 業界にあって総合的な影響力を及ぼしているのは事実だ。
 近年入社した広瀬良太は、まさしく工藤の手足となって動かされているようだ。
 良太は千雪の講義を取ったこともあるT大法学部の出身である。
 在学時は野球部に所属し、細身ながらも四年間野球部のエースだったことは千雪もよく知っていた。
 何やらいろいろ事情があるらしく、いつぞや青山プロダクションの玄関前に良太が倒れているところに通りかかったときは驚いた。
 まだちゃんと紹介されてはいないが、どうやら工藤は結構良太を気に入っていると千雪は見ている。
 そういえば、今回のドラマに抜擢された俳優は大澤流だという。
 映画では青山プロダクションの志村嘉人が演じている役どころである。
 原夏緒を特集する番組撮影のあとに出くわした男だと、工藤が言っていた。
 あの、クソ生意気なヤツ!
 もっとももう覚えてもいないだろうし、誰であろうとキャスティングに口を出すつもりはない。

 スタジオに通された千雪は、青山プロダクションの顔見知りの社員秋山から早速監督の大秦を紹介されて軽く挨拶する。
 中を見渡すと、大澤流当人と話しているのは同じくドラマに共演する中川アスカだった。
 青山プロダクションの今や看板女優である。
 秋山はそのアスカのマネージャーとして、常日頃彼女の我侭、もとい天真爛漫な行為が暴走するのをクールに抑える役目を負っている。
「先生! 来てらしたの!!」
 視線を感じたのか、アスカが目ざとく千雪を見つけて走りよってきた。

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