誰にもやらない10

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「もういっちょ、頂上行くか? な、コースケ」
「ひぇ~っ!! もー勘弁してくださいよぉ」
 午前中と同じメンバーで、それぞれにゲレンデに散ったのだが、容赦ない佐々木の言葉に浩輔は悲鳴をあげた。
 テニスでもゴルフでも遊びとなると半端ではないこの会社の面々の例に漏れず、佐々木は仕事の時のノンビリムードとは人が変わるのだ。
 リフトで頂上まで登ると、「ちょっと休憩な」と、佐々木は積っている新雪の上に座り、いつの間に用意したのかポケットから缶ビールを取り出し、ひとつをよっこいしょと佐々木の隣に腰を下ろした浩輔に渡した。
 青空に吸い込まれるような、不思議な浮遊感。
 向いには雪をかぶった山々の連なり。
「スッゲー……最高ッスね!」
「そうやろ?」
 佐々木がいつものように浩輔の頭を手でかき回しながら笑う。
 へへへ、と笑い返す浩輔だが、さやかと、あの黒いスキースーツの男の影が、また頭をよぎる。
 考えすぎだ。
 浩輔はそれを振り切るように、ビールを飲み干した。
「そういえば、佐々木さん、先週も大手からヘッドハンティング目的でアポきてたんですよね? うちにいるより、もっと活躍できそうなのにって、みんな言ってますよ?」
 佐々木はするとアハハと笑う。
「歯に衣着せぬ、そういうコースケちゃん、俺、好きやなぁ」
「はあ?」
「ぼんやりしてるようで、聞きにくいこともズバッと聞いてくれるし」
 確かに、と浩輔は今までの自分の行動を振り返って頷いた。
「まあ……あんまり考えないで口にしちゃうかも。嘘も苦手だし」
 学生時代も友達の中では意外性の浩輔で知られていた。
『すみませぇん、ここ禁煙なんで』
 ぼんやりして、仲間うちでもいつもへらへら笑っているだけの存在、と思いきや、禁煙ルームでタバコを吸っているおじさんに軽く言ってしまう。
 それが学部長だったりしたこともあるわけで、周りはひやひやものなのだが、本人はいたって気にしない。
 いわゆる素行に問題がある評判のよくない運動部の連中に女の子が絡まれているところに出くわした時もそうだった。
 一番避けて通りそうな雰囲気の浩輔が友人たちの止める間もあらばこそ、「○○さーん、こんなとこにいたんだ、そろそろ行くよぉ」とか何とか声をかけたりするので、男たちは浩輔にガンを飛ばすものの、女の子を放して立ち去ってくれた。

 


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