誰にもやらない11

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 びびって避けようとしていた友人たちには、絶対仕返しされるぞ、などと脅されたのだが、幸か不幸かそういう目には合わずに卒業してしまった。
「せやなぁ、春日さんに、禁煙ですよぉなんて言うたの、コースケちゃんくらいやもんなぁ」
佐々木が思い出し笑いをする。
「また、その話っすかぁ?」
「あの恐持ての社長に注意しようなんて身の程知らず、コースケちゃん以外おらんわ。それが春日先輩、ハトマメ状態で、すまん、とかって、自分の部屋以外で吸わんようになったからなぁ、コースケちゃんってすごい!」
「やめて下さいよぉ だから、うちおばあちゃんが喘息で、タバコにはついついきつくなっちゃって……」
 浩輔は慌てて弁解の言葉を探す。
「春日さんは大学の先輩でな、お前がいなけりゃこの会社たたむいうて、常々脅されてるし」
「社長が?!」
 驚いて浩輔は佐々木を凝視する。
「またまた、コースケちゃん、すぐ鵜呑みにする」
「え、冗談っすか、もう」
 脱力して浩輔は唇を尖らせた。
「だからコースケちゃん好きやねん」
 笑いながら佐々木は浩輔の頭をかきまわす。
「まぁた、ガキ扱いするし!」
 浩輔はその手を退けて文句を言った。
「いや、まあ、そんなわけで、俺はやりたい放題させてもろてる。せかせかしたの好きやないしぃ」
「そうっすね。俺も同じく」
 浩輔は清々しくもきりりと鎮座する雪の山々に目をやった。
「やろ? それより難儀なんはうちのおかあちゃんやねぇ」
 佐々木は珍しくため息をついた。
「おかあさん、どうかされたんですか?」
 心配気に浩輔は佐々木を振り返る。
「ほら、俺な、二年前、嫁に逃げられたやろ?」
「はあ……そう、なんっすか?」
 バツイチとは聞いたことがあるものの、浩輔はそんなに詳しくは知らなかったのだが。
「毎朝、聞こえるように、俺にええご縁がありますようにやなんて、仏壇の前でやられてみ」
「ご自宅、一番町でしたっけ?」
 くくっと笑いをかみ殺して、浩輔は聞いた。


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