誰にもやらない13

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 保奈美が溜め息交じりに言うと、直子が目を輝かせて頷いた。
「女優とかとよく噂んなってたよね」
「この先のデッカイ別荘、彼のモンだって!」
「よう知ってるねえ、君たち」
「何であのコマシヤローどもがここにいてるねん!! しかもリサまで!!」
 佐々木が感心したように言う隣で、大沢が一人面白くなさそうに毒突いた。
 それはこっちの科白だ。
 そんな話を聞きたくなくて、天国から現実に逆戻りしたような思いに、浩輔はたったか歩きだした。
 河崎達也。
 その名をまさかこんなところで聞くなんて。
「あ、コースケちゃん、それでねえ、今夜のパーティにぜひおいでって。モデルやタレントなんかも来るみたい。行こうよお、みんなで!」
 直子のうきうきした声が背中から聞こえた。
「待ってよ、コースケちゃん!」
 直子につられて、みんなもぞろぞろと後に続く。
 冗談じゃあない。
 浩輔は東京に飛んで帰りたくなった。
 その時、カフェテリアから出て階段を降りてくる三人連れのシルエットがあった。
 彼らが近づくにつれ、浩輔の心臓は激しく警鐘を鳴らし始める。
「へえ? ナオちゃんの彼氏って、コースケクンだったんだ? 世の中狭いねぇ。久しぶり、西口浩輔クン。何かカワイくなったね?」
 皮肉混じりのその声に浩輔は身を固くした。
 どうして藤堂義行までいるんだよ!
「えーっ!!? 何で、藤堂さん、コースケちゃんのこと、知ってるのぉ?」
 直子が驚いて声を上げた。
「ウチの営業にいたのよ、コースケクン。二年も可愛がってあげたのに、すっかり音沙汰なしなんだもん」
 浩輔が隠していた前歴を、さやかがさらりとばらしてしまった。
「えーっ!! うっそぉ!」
「って、英報堂に、コースケちゃんいたの?」
 女の子だけでなく大沢や土橋も驚きの声を上げる。
「あら、内緒にしてたの? コースケくん」
 さやかが声高に笑った。
 その声はいやでも英報堂時代を思い起こさせ、浩輔はすぐにでもその場を去りたかった。
 彼女の後ろで鋭い視線を向けている男の顔を見る勇気はないが、気配だけでも男の威圧感は充分に感じている。
「パーティ、みんなで行ってくれば? 俺、スンゲー疲れたし、パス」
 そのまま彼らの横を通り過ぎようとした浩輔は、藤堂に腕を取られた。
「つれないこと言わないの。みんな、コースケちゃんと行きたいって言ってんのに」
「離して……下さい!」
 人を茶化した言いぐさに、浩輔は藤堂を睨みつける。
「離せよ、嫌がってるやろ」
 何かただならない気配を察した佐々木は藤堂の腕から浩輔を引き剥がした。
「まあまあ、同業者同志、仲良くしようや、コースケちゃん」
 それまで一言も発していなかった男が口を開き、ニヤリと笑う。
 河崎の声を聞いた途端、ドクドクと、浩輔の血液が逆流し始めた。


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