誰にもやらない17

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     act 2
 
 
 浩輔は大学を卒業後、東京の遠戚のコネクションもあって大手広告代理店英報堂に入社した。
 内定をもらった時は、浩輔より両親や周囲が大喜びだった。
 入社早々仮配属になったのが、英報堂のトップAE、河崎達也がいる第一営業部である。
 河崎達也といえば色々な意味合いから業界ではその存在を知らぬ者はないと言っても過言ではなく、とにかく入社当初から頭角を表し、彼の携わった仕事で扱った商品は必ずといっていいほどヒットした。
 これがまた財界の大物『河崎グループ』CEOの御曹司で、会社の預りモノという立場上、その強引なやり方や傍若無人な振る舞いも上の人間にすら黙認され、河崎の下では長く続いて三カ月だ、そんな話が情報通の同期からも聞こえてきた。
 自分には到底縁のない人だ、と思っていた矢先の配属だった。
 もったいぶった説明など一切抜き、浩輔を自分の黒子のように連れ回し、従わせ、自分で学び取れと暗に促す。
 扱う商品の価値やイメージを把握した上でのプランニング、マーケティングやメディア情報、セールス・プロモーションの手法、と、浩輔が寝る間も惜しんでまとめた広告戦略のレポートは河崎にクソミソに罵倒される。
 そんな河崎のやり方に戸惑いながらも、浩輔は持ち前の負けん気で、その型破りな指導に食らいついていった。
 しかも行く先々で河崎の周りに女達が群れること群れること。
 女優やモデル、キャリア、それなりに自信のある女ばかり。
 傲岸不遜極まりない男であるにも拘らずだ。
 確かに、こんな男が現実にいるんだと感心するほど、男の浩輔から見てもカッコイイし、何よりキレる。
 河崎が私生児であることは公然と知られているが、彼の生い立ちは下手な小説よりドラマチックだった。
 河崎の母は河崎グループの取引先であるアメリカの富豪の一人娘で、メリッサ・フィンリーといった。
 河崎の父、現河崎グループCEOである河崎達彦がまだ参加の河崎商事常務の肩書きだった頃、妻子ある達彦に横恋慕し、彼女は達也を産んだ。
 河崎の傲慢さはこの母親譲りといわれている。
 だが達彦は結局妻とは別れなかった。
 当時日本に滞在していたメリッサは、達彦に別れを告げられたあと、達也を残し、車でホテルを出たまま箱根で事故死している。
 遺書はないが自殺ではないかという噂がたった。
 メリッサの父は達彦が子供を引き取ることを許し、河崎グループとの連携を存続させたが、河崎は父親の妻とはほとんど口を聞いたこともない上、母の違う兄や姉とは扱いも違い、河崎家でもまるで預かりもののようにして育った。
 フィンリーの要請で、K大を卒業した後、一年ハーバード大に留学、その後日本に戻った河崎は英報堂に鳴り物入りで入社している。


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