誰にもやらない23

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 河崎の部屋でポツンととり残される。
 言い難い虚しさ。
 会社の中でも恐ろしく独りだ。
 自ずから離れよう、初めてそう思った。
 辞めよう!
 これ以上無様な姿を晒す前に。
 この二年は自分にとって一体何だったのか。
 仕事で業績を上げるどころか、河崎とのことが噂になり、周りからは蔑まれ、存在自体を賎しめられた。
 苛めも結構きつかったが、屈するつもりはなかった。
 ただ河崎に置いていかれまいと必死で。
 仕事上での河崎を尊敬し、追いつきたいと思っていたから。
 愛していたのだ。
 その罵声すら。
 けれども肌を重ねるたびに心が遠くなる。
 部下としてだって、自分の代わりなんかいくらでもいるだろう。
 むしろ自分がいても河崎の足を引っ張るのが関の山だ。
 どこにも、もう、自分の居場所を見つけることはできない。
 一方通行のデッドエンド………。
 静寂に耐え切れずつけたテレビから、バラエティ番組の無闇に賑やかな笑い声が飛び込んでくる。
 ふと随分笑っていないのに気づく。
 広い河崎の部屋で、ひとり、ぼんやり座っている浩輔を見上げて、チビスケが、ミャア、と擦り寄ってくる。
「チビスケ…疲れちまったよ、俺」
 浩輔は猫を抱き締めて、目を閉じた。


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