誰にもやらない32

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 運命の裁きの日、暗澹たる思いで出社した浩輔を、佐々木は大仰に抱きしめた。
「コースケ、やったで!!」
「え、まさか……」
「ウチのプレゼンが通ったんや! お前の絵が宣伝部長にいたくお気に召したんやて!」
「ホントですか!?」
「やったねっ!! コースケちゃん」
 直子もまだ半信半疑の浩輔に飛びついて喜んだ。
 それから制作会社のCF撮りなどに立ち合いながら、浩輔は改めて英報堂での河崎のもとでの二年間の重みを感じていた。
 他社に負けるような河崎を見たことがなかっただけに、複雑な心境でもあった。
 しかもジャスト・エージェンシーのような弱小会社に。
 同時に、何かの手違いであったとしても、自分をバカにしてきた人間たちに一矢を報いたような、そんな思いもあった。
 自分の仕事が一段落すると、浩輔は、佐々木と一緒にCFの音楽を担当するイリュミネのリハーサルに立ち会うことになった。
 現在人気上昇中、四人組のロックグループだ。
 特にボーカルのキョウヤの人気がすごい。
「あれ、ササキぃ、カワイイぼうや連れてる」
 彼らは佐々木と以前にも一緒に仕事をしていたことがあるらしく、スタジオに着くなり、馴れ馴れしい調子で、頭をピンクに染めたキョウヤが近づいて来た。
「あー、奥さんに去られて、ついにソッチに宗旨変えしたとか?」
「ウチのデザイナーや。苛めんなや」
「へえ? 新入社員? ぼうや、何て名前?」
「西口浩輔です。よろしくお願いします」
 ぼうやなどと言われて、少しムッとしながら、浩輔は自己紹介する。
 話してみるとざっくばらんで愉快な連中だった。
 しかも同年配とわかると、「ウッソー!!」と、キョウヤが素っ頓狂に驚いてみせる。
 むくれた浩輔をケラケラ笑っていたメンバーは、やがてそれぞれのパートでスタンバイした。
 


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