誰にもやらない38

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じっと浩輔の目を見下ろしている佐々木は、また恐ろしく綺麗だから始末に終えない。
「平気平気。コースケちゃんなら、うちのお母ちゃんも絶対気に入る思うわ」
 佐々木の言うことは相変わらず掴みどころがない。
「まあ、考えてみ。答えがNOでも、仕事とプライベートはきっちり分けてるよって、心配はいらんからな」
 佐々木は大通りに出ると、ちょうど来たタクシーを止め、浩輔を乗せるとにっこり笑ってドアを閉めた。
「今夜は俺が危ないから、帰したる」などと耳元で囁いて。
佐々木のことは好きだ。
上司としても人間としても。
でも佐々木と付き合うなんて考えたこともなかった。
 佐々木は何だか心地よい羽根布団みたいな気がする。
 河崎のことだって今度こそ忘れられるかも知れない。
 あの人なら、ちょっとくらい寄っかからせてもらえるかな……優しいし、大人だし…
 浩輔は自分でも調子のいいことを考えていると思う。
 振りかえると、佐々木がまだこちらを見ていた。
 スキーで出くわして以来、やたら河崎と自分の行動領域が絡んでいる。
 でも河崎とまた同じ道を歩けるわけではない。
 費えた時間はもう遠い。
 河崎が誰か本当に愛しあえる人と幸せであればいい。
 ―――それは俺じゃない。
 
 


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