誰にもやらない39

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     act 4
 
 
 異常気象のお陰で、東京はこの冬何度目かの大雪に見舞われていた。
 歩道のあちこちに、雪の固まりが残っている。
 朝は晴れていたのに午後から曇ってきた。
 この寒さではまた雪になるかも知れない。
 MBC本社前のカフェで待ち合わせと佐々木に言われて、浩輔は内心あまり気が進まなかった。
 汐留には英報堂があり、知った顔に会うのも嫌なので、極力この辺りは避けていたのだ。
 C社のキャンペーンCMの次のバージョンには音だけでなく、今度はイリュミネのメンバーも出演することになっている、その打ち合わせだが、イリュミネのマネージャーからスケジュールの都合上、テレビ局での打ち合わせの後ならと、この店を指定された。
 営業の土橋は別のクライアントとトラブったとかで、「打ち合わせ、浩輔、お前に任せる」ときた上、佐々木も別の仕事があって、先ほど浩輔の携帯に少し遅れるという電話が入った。
「悪い、春日さんと朝方まで飲んでて、今日は車やないんで」
 テレビ局だけでなく、よく英報堂の人間も打ち合わせに使う店なので、浩輔は何やら居心地悪そうに隅のテーブルで小さくなっていた。
 いや、河崎や藤堂やさやかとまた出くわしたりさえしなければ、と思う。
 第一、もう関係ないんだし、堂々としてればいいのだ。
 そう自分に叱咤するそばから、ドアが開くとつい身構えてしまう。
「あれ、あの人……」
 フレームレスの眼鏡にびしっとスーツを着こなしてエリート然と店に入ってきたのは、確かコンペの際、河崎や藤堂と一緒にいた男だ。
 まさか、やっぱり河崎さんが………
 またしても心臓が高鳴り始めた浩輔だが、ややあって店に入ってきたのはテレビ局の人間のようだった。
 そのまま二人は打ち合わせを始めた。
 何か、スキがないっていうか、俺とは出来が違うって感じ。
 あーあ……、やっぱ、俺、辞めて正解ってトコじゃん。
 今更ながらに思い知らされる。
 二年間、自分なりにがむしゃらに一生懸命やってきたつもりだったが、一生懸命だけではどうにもならないこともある。
 もしあのまま会社に居続けたとしても、エリートコースなんか自分には到底縁がなかっただろう。
 これでよかったのだ。
「お待たせ! さみしかった? コースケちゃん」
 ぐだぐだと考えごとをしていた浩輔は、ストンと前に座った佐々木の顔を見て、ようやくほっとした。
「さみしかったですよぉ、十分くらいとかって、二十分経過してます!」
 上目遣いにに睨んでみせると、佐々木はジャケットを脱ぎ、ぐるぐる巻いていたマフラーを外しながら優雅に笑う。


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