誰にもやらない40

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「ほな、ケーキ、追加してええよ。ここのチーズケーキうまいんやで」
 言うなり、ウエイターを呼んでチーズケーキを二つと紅茶を注文する。
「また、ウエイターさん、顔赤くしてましたよ、佐々木さんの笑顔、ただでさえヤバいんですから、あんまり大安売りしないでくださいよ」
 河崎とは全くタイプは違うのだが、この美貌である、佐々木と一緒に歩く時も、よく、何者だ? というような視線に出くわす。
「何ゆうて、ブーたれてるコースケちゃんの可愛さには負けるわ」
「またそーやって人をからかう」
「イリュミネ、遅れるって?」
「昨日の電話では、五時頃ってことでしたけど、時間押すかもって言ってたし」
 そんなやり取りをしているうちに、英報堂の眼鏡のエリートは打ち合わせを終えたらしく、テレビ局の人間が帰ると、自分ももさっさと席を立った。
 店を出る時、浩輔の方を一瞥したような気がしたが、まあ気のせいだろう。
 ちょうど二人がケーキを食べ、お茶を飲み終えて一息ついた頃、マネージャーを従えてイリュミネのメンバーがどやどやと入ってきた。
「春から、夜中の番組、俺らやることになってさ」
 元々陽気なメンバーは、一様に喜んでいる。
「うわ… 何か、イリュミネ、大ブレイクの予感?」
浩輔も嬉しくて笑顔を向ける。
 確かに、音楽番組への出演などで露出度が増え、ファンも急増した。
 景気低迷でつい下を向きがちなこの時代だからこそ、割と幅広い世代に受け入れられている音楽だけでなく、このメンバーのルックスに加え、彼らの持つポジティブな雰囲気に期待を寄せる向きもあるのだ。
 そそくさと打ち合わせを終え、マネージャーにせかされてメンバーが帰ると、佐々木と浩輔も席を立つ。
「あいつら、何かいいですよね。見てると元気になれるっつーか」
「フン、ノー天気ってやつ。昔っから」
「え、佐々木さん、つき合い古い?」
「キョーヤって、近所のハナタレガキでさ」
 マフラーを巻きながら、佐々木は笑った。
「そーなんだ」
「コースケちゃん、今日はこの後、急ぎの、何もないんやろ? 飲みいこか?」
「え、でも佐々木さん、明け方まで飲んでたんでしょ?」
「そんなん、歩いとったら、消えてもた」
 浩輔がレジで会計を済ませる佐々木を待っているうち、ドアが開いて数人の男が入ってきた。
「あれ、ひょっとして西口さん?」
 まさか英報堂の社員かと、浩輔はぎょっとして身構えた。


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