誰にもやらない47

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「か…わさき…さん?」
「お前の部屋なんかとっくに調べてあったさ」
 鍵をガチャガチャいわせながらドアを開け、浩輔を捕まえたまま、河崎は後ろ手にドアをロックすると、有無を言わせず、浩輔を部屋の中に引き摺っていく。
「え…どうし…て…」
 狭いベッドに押し倒されて、ようやく浩輔は事態を飲み込んだ。
 河崎の目は尋常ではない。
 獰猛な野獣そのものだった。
「やめ…! 河崎さん!! やめて下さい!!」
「るせーんだよ!! 騒ぐんじゃねー!」
 薄い壁で仕切られたアパートでは、真夜中、騒いだりすれば、隣近所に筒抜けだ。
 浩輔は河崎の身体に組み敷かれ、涙でグチャグチャのまま、必死で暴れた。
 だが悲しいことに、頭を押えつけられ、唇を奪われた途端、力尽きてしまった。
 河崎は浩輔の服を剥ぎ取り、その痩せた四肢を力ずくで蹂躙する。
 忘れようとしてるのに、何故…………!
 力強い抱擁、口づけの熱さも、吐息の色も、肌の感触、体臭さえ、全身で覚えていた。
 大きな手が浩輔の感覚をあまねく操り、節のある長い指が、その身体に眠っていた官能を呼び覚ます。
 あくまでも傲慢に侵入する河崎の粗暴な行為は、浩輔に苦痛と恐れをもたらしながら、尚も享楽に従属させようとする。
 河崎の目の奥に暗い情念が垣間見える。
 欲情にのみつき動かされた、河崎の行為にさえ、浩輔の身体は反応しはじめていた。
 好きなのに!
 こんなの嫌だ…!!
 心が悲鳴を上げていた。
 潮が引いたように怒涛の時が去ると、重い現実が戻ってくる。
 夜明けまでには、まだ間があった。
 痛いのは身体だけではない。
 我に返った浩輔は、自分を、その状況を呪った。
 あなたの周りには、たくさんの女がいるじゃないか!
 何で、俺なんか! こんな思いはもうしたくなかったのに。
 浩輔は、ベッドの上で、顔だけを河崎から背けて啜り泣く。
「どうして…こんな」
 背後で、河崎が身体を起こした。
「…帰ってください!」
ふり絞るように浩輔は声を上げた。
「浩輔…」
「もう、俺の前に、現れないでください…お願い…だから…」
溢れる涙を留めようもなく、浩輔は懇願した。
 しばらくして、河崎がベッドを降り、服を着ている気配がした。
「悪かった…」
 河崎の声が、ポツンと聞こえた。
 遠くで、ドアが閉まる。
 階段を降りていく靴音がした。
 続いて、車が走り去る音。
 心なんて、もう、なくなってしまえばいい。


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