誰にもやらない49

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 それから二時間ほど経った頃、銜えタバコでフラリと入ってきた影があった。
「達也!!」
 コーヒーの販売機の前で、河崎は振り返った。
「すげー形相。イロ男が台無しってとこ?」
「聞きたいことがある。ちょっと来い!!」
 藤堂は河崎のからかいにものってこない。
「おっかねーな? ここじゃマズい話ってわけ?」
 河崎の腕を掴み、リフレッシュルームの奥に河崎を連れていくと、藤堂は声を落とした。
「お前、何をした?」
「ああ?」
「ネタはあがってんだよ!」
「身に覚えはありませんよ、刑事さん」
「おちょくるんじゃねー!! 浩輔をどうしたんだって聞いてるんだ!」
 一瞬、河崎の口元が歪む。
「さっきジャスト・エージェンシーの佐々木が会社に電話をよこした」
「ほう? いつの間にお友達になってたんだ? あのクソヤローと」
苦々し気に河崎が揶揄する。
「お前が掴まらねーから、わざわざ俺に怒鳴り込んできたんだ! 浩輔が昨日から休んでるって。お前、一昨日の晩、佐々木やキョウヤの前で浩輔かっさらって逃げたって言うじゃねーか! 何だってそんなマネ…」
 河崎は苦笑いした。
「安心しろ。ストーカーはやめだ。もう、粉々ってやつ…」
「どういう、こった?」
 藤堂はさらに険しい貌で河崎を睨みつけた。
「出て行けって、言われたのさ…浩輔に」
「おい、お前、何したんだ? コースケに?」
「フン…昔を思いだせって、身体に聞いてやっただけさ…徹底的に嫌われたわけだ。これで、一巻の終わり」
「達也…」
 河崎は藤堂から目を逸らし、鼻で笑ってデスクに戻って行った。
 


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