誰にもやらない51

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「いいかげんにしろ! 毎度、お前のお守りにつき合わされるこっちの身にもなってみろ」
 藤堂は河崎のあまりの体たらくに呆れながらも、性分からと腐れ縁から放り出すこともできないでいた。
「誰が頼んだ!? きさまも帰れ!」
「また乱闘騒ぎでも起こされて、マスコミを喜ばす協力なんざ願い下げだ。第一、天上天下唯我独尊のお手本みてーなお前につき合ってやれる者が、この俺様以外どこにいる?」
 藤堂は河崎が立ち寄りそうな店に、河崎が現れたら連絡するようにと頼み、連絡があるとすぐ駆けつけた。
「マコちゃんに嫌われちゃっても知らねーぜ?」
「よけーなお世話だ! それより浩輔に何で言わない? 田口綾乃のことだってあれは…」
「んな、腐った昔のことは忘れた!」
 河崎は藤堂の言葉を遮って喚く。
「じゃあ、今の言葉で、ちゃんと伝えろよ!」
「顔も見たくねーやつに、言い寄られて、お前、嬉しいか?」
「達也……何をガキみてーに拗ねてるんだ!」
「るっせーんだよ! とっとと帰れっ!」
 どうやら河崎の逆鱗に触れたらしく、いきなり降ってくるパンチを藤堂はすかさず躱す。
 それを鼻でせせら笑うと、河崎は近くのバーに飛び込んでしまった。
「ほんとに母親の二の舞か? ブキッチョめ! つっ走るしか能がねーのかよ…」
 藤堂には、常軌を逸した河崎の行動に、今の科白が冗談でなくなりそうな危惧があった。
 
 
 
 
 風が和らいで、日差しが少しばかり温かく感じられるようになった。
 街中が春の訪れを告げている。
 デザイナーセクションの自分のデスクでぼんやり窓を眺めていた浩輔は、開きっぱなしの週刊誌をさりげなく閉じた。
 桜の開花予想の次のページには最近の河崎の『ご乱行』がスクープされている。
 やはり気になって、つい買ってしまったのだ。
 あれから何も話してはいないが、佐々木は今までと変わらぬ態度で接してくれる。
 それが申し訳なく、またありがたくもあった。
「あれ? コースケちゃん、三時からサワちゃんと『ベリスキー』じゃなかった?」
 浩輔はガタン、と立ち上がった。
「いっけね! もう二時半!」
「キャットフード?」
 浩輔の慌てぶりを見て、美紀が笑っている。


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