誰にもやらない55

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「お前に、愛想つかされるのも当然だ」
「違う、俺…」
 涙がまた溢れてくる。
 言葉にもならない。
「初めはヘラヘラ懐いてくるガキ面をちょっと摘み食いしてみたくなっただけだった。どうせ、目的は俺に近づいてくる女どもやカマ野郎と同じだと思ってた。なのにお前は、怒鳴っても怒鳴っても、俺に向ってきたよな。いつも一生懸命で…。自分のことしか考えてないやつらばっかの中でお前だけは違ってるんだとやっとわかった。いつのまにか俺はお前だけは手放したくないと思うようになった」
「ウ…ソ…」
 浩輔は涙を手で拭いながら河崎を見上げた。
「お前は俺だけのものだと、勝手に思い込んでた。お前が俺の前からいなくなって、滅茶苦茶後悔した。ずっと、お前に戻ってきて欲しかった…」
いつも傲岸不遜に見下していると思っていた河崎のらしくない自信なさげな言葉が続く。
「だって…そんなの…」
 信じられない。
浩輔は首を横に振る。
「こないだは、お前が思いどおりにならねんで、つい、ムチャやっちまった…これで、ほんとに、お前に最後通牒渡されたんだと、自棄になってた…自業自得なのにな」
 じっと浩輔を見つめる河崎の手が、浩輔の頭を優しく撫でる。
「俺の傍にいろよ……どこにもいくな」
「河崎さ…ん…」
 本当にその腕をとってもいいのだろうか。
 どうしても拭えない不安。
 けれど再び河崎に抱き込まれると、浩輔はもうただその胸にすがりついてしまった。
「…俺、俺こそ、ずっと好きで、河崎さんのことばっか…どうしようもなくてっ…」
 おずおずと二人の唇が重なった。
 幾度も思いの熱さを高め合う。
 浩輔の吐息が艶めいたのを嗅ぎ取ると、河崎は唇を合わせたまま、その場でもどかしげに着ている物を脱がしていく。
 身に付けている物を何もかも取り払い、心までも曝け出す。
 抱きしめる肌の熱さに、お互いがどれほど必要であるか思い知る。
 ぬくもりを与え合い、迸るような熱さを、河崎は浩輔にぶつけた。
 浩輔が河崎の導く甘い罠に落ち、やがて声にならない悲鳴を口にするのを楽しみながら、河崎は浩輔の存在全てが欲しいと思う。
 この上ない優しい所作で、河崎は浩輔を愛した。


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