誰にもやらない61

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 さらに、ようっ、と突っ立ったままの浩輔の肩を叩いたのは、何とキョウヤだ。
 手にはボトル二本とピザ。
「あら義行、まだいたの?」
「どういうつもりだ?」
「今日、コースケちゃんが引っ越すって、達也が言ってたから」
 モデルばりのボディに長い髪、黄色いミニのワンピース。
 さやかは相変わらず派手で美しい。
「俺は佐々木の代理。これ持ってけって、ドンペリ。佐々木の差し入れ。グラスどこ?」
 キョウヤはつかつかと入り込み、リビングを見回す。
 うさん臭そうに突然の来訪者を眺めるチビスケの隣に座り、妙な取り合わせの三人を前に、浩輔はグラスを持たされる。
「食べないの? ピザ。毒なんか入ってないわよ」
 その言い方には慣れているものの、イチイチかんに触わる。
 ああー、もう河崎さん、早く帰って来て欲しい。
 これであの三浦までが一緒だったら、と思うと、考えただけで疲れてしまう。
「かわいいわね! チビスケも食べる?」
 急にさやかがチビスケを抱き上げるが、チビスケは嫌がってスルリと床に降り、トコトコと玄関に向った。
「あら、よく躾けてるわね、コースケちゃん」
「人を見る目があるんだよな、チビスケは」
 藤堂が口を挟む。
 しばらくして、玄関が開く音がした。
「何やってるんだ! てめーら!!」
 ドアが開くと同時に、第一声が轟いた。
「あ、おかえりなさい」
 ジロリと見回すその表情は、できる限り近づかない方がいい時のそれだ。
「コースケちゃんのお引っ越し祝いじゃない。達也も早く座りなさいよ」
「おう、さきに始めてるぜ」
「ピザ足りねーな、デリバリー頼む?」
 眉間に皺を寄せたまま、無理矢理グラスを持たされた河崎は、浩輔を振り返る。
「何で、あんな女が出るんだ?」
「…あんな女?」
 浩輔は何のことかわからなくてきょとんと河崎を見つめた。
「お前の携帯にだ」
「ああ、あれ、俺のとこに直ちゃんがきてて、デスクの上の携帯に勝手に出ちゃってぇ…」
 しばし間があった。
「……直ちゃん……」


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