逢いたい10

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 すぐ来い、と言われたらホテルに土産を置いて来たりしないですぐ行くしかないだろう。
 カフェを出た良太は、ちょうどやってきたタクシーの空車を停めた。
 『オホーツク』は工藤の言ったとおり、運転手にはすぐわかったようだ。
 店構えは和食の店とはわかるものの飾り気のない造りで、ドアを開くまではその奥にちょっと粋な小料理屋が隠されているとは気づかない。
「値段はそこそこだけど、知る人ぞ知るいい店みたいですよ。結構有名人とか使うらしいし」
 運転手も話していた。
「お連れ様がいらっしゃいました」
 う……お連れ様って………
 仲居に案内された良太は、部屋の前で深呼吸する。
 襖が開いて部屋に入ると、良太は正座をした。
「はじめてお目にかかります。工藤の秘書の広瀬と申します」
「ああ、堅苦しい挨拶はいいから、こっちこっち」
 頭を下げた良太に、気さくに声をかけたのは坂口である。
 顔を上げると、その坂口の横にいる男と目が合った。
 うわ、宇津宮俊治……
 工藤とは確か同年輩だったはずだが、若い頃坂口のドラマ『陽だまりの家』でブレイクし、端正な容姿で未だにアイドル並みの人気があるが、年齢とともに演技にも磨きがかかり、映画やテレビの仕事だけでなく、若い頃から精力的に演劇活動を続けている今や大物俳優だ。
 常日頃テレビのCMで宇都宮にお目にかからない日はないだろう。
「失礼します」
「まず一杯だ」
 工藤の横に良太が座るか座らないかに、あくの強い顔の坂口がにこやかにビールを差し出した。
「あ、ありがとうございます」


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