逢いたい11

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 隣に座る工藤をちらりと見やるが、いつもと同じ、眉間に皺をよせている表情からは何を考えているかわからない。
 それでも数日ぶりに工藤の顔を見て何やらほっとした良太は、向かいの二人に顔を向ける。
 二人は和やかに笑い、冷酒を酌み交わしている。
 今夜の打ち合わせはどうやらこの三人だけだったようだ。
 テーブルにはジンギスカン鍋がドンと置いてあり、その美味そうな匂いが良太の嗅覚を刺激する。
「遠慮せずにどんどんやれ」
 坂口は世話好きな男で、それぞれの器に鍋から取り分けて、「ほら、ちったあ工藤も食えよ」と工藤の前に山盛りの器を置いた。
「はあ、どうも」
「相変わらず不景気そうなツラしやがって」
 べらんめえ口調でしかも口は悪いらしい坂口は、だが人好きのする雰囲気を持っている。
 宇都宮は酒が入ると徐々に口も軽くなって、常に柔和な笑顔を湛えていた。
「ああ、パワスポなら見てるよ、へえ、そうかあれ、君の番組か」
「え、いや、俺のってわけではないですが……あの、『陽だまりの家』すごく印象に残ってます。『審判』とかもカッコよかったです」
「ありがとう」
 こんな甘い端正なマスクでにっこりされたら、女性なら大抵は胸をときめかせないではいないだろう。
 おまけにタッパあるし、パッと見より体格もよさそうだと、良太はちょっと羨まし気に宇都宮を見た。
 『審判』は行動的な裁判官がち密な推理力を働かせて事件を解決するミステリー小説の映画化だが、追い詰めた犯人と対した時、裁判官の耳に犯人の心の声が聞こえてくるという現実離れした設定で、主演の宇都宮はこの映画で改めて幅広い年齢層からの人気を得た。
「小樽と芦別が舞台だ。俊治、君は北海道だったよな」


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