逢いたい14

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 野球と聞いたら良太も口を挟まずにはいられない。
「同士じゃんか。だから、パワスポやってるんだ? ポジションは? 俺はピッチャーだった」
「え、俺もです。直球しか投げない直球バカってキャッチャーに怒られてました」
「俺はフォークを改良して消える魔球の特訓してたな」
「……消える魔球ですか?」
 良太はちょっと恐る恐る宇都宮の顔を窺う。
「あ、何か今、小ばかにしたような眼で見たな」
「え、そんなことはありませんよ」
 あたらずともな良太は慌てて訂正した。
「まあ、いいさ、俺の子どもの頃に流行ったマンガがあってさ」
 すっかり野球で意気投合状態の二人を横目に、坂口は空になった工藤のグラスに冷酒を注ぐ。
「何だ、えらく今夜は静かじゃねぇか」
「疲れてるんですよ。分単位で日本中を駆けずり回ってるんで」
「ふん、お前さんの方は、何とかってぇモデルとよりを戻したんだって?」
 疲れているところへその話題は工藤にとって否定するのも億劫なものだった。
「あんなものはあの女の事務所が仕掛けた売名行為だ」
 途端に工藤の眉間に深く皺が刻まれる、良太の前では極力持ち出したくない話題なのだ。
 案の定、ちらっと工藤の方を見た良太と目が合ったが、良太はすぐ目をそらす。
「そうかぁ? 彼女の方は満更でもないみたいじゃないか? ドラマ、お前のプロデュースだろうが」
「別の仕事で手いっぱいなんで、広瀬に任せてます」
 任せてって丸投げの間違いだろ。
 工藤のセリフを耳にして、良太が心の中で突っ込みを入れた時、ポケットで携帯が鳴った。
「ちょっと失礼します」


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