逢いたい15

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 良太は廊下に出て襖を閉めた。案の定、たった今話題に上がっていた丸投げの仕事で、スキーに行っている頭痛の種その2からである。
「はい、お疲れ様です。いえ、え? いや、待ってください、それはちょっと……え? いや監督の意見を聞く以前の問題で」
 あるシーンを見直したいという脚本家からのその思いつきは、もっともらしく情景に深みを出したい云々と並べ立てているが、それによって登場人物の出番が変更され、後のシーンにも変更せざるを得ない状況が予測されるだけで、全体から見て情景がさほど影響されるものではない。
 どちらかというと監督のやり方にケチをつけたいだけの提案でしかないだろう。
 良太はついつい大きく息を吐いた。
「何だって井上と川西を組ませたんだ? やつらハブとマングースってな噂だろう」
 部屋の中では坂口が工藤にそう切り出した。
「俺が組ませたわけじゃない。スポンサーにそれぞれ取り入ってて、蓋を開けてみたらハブだかマングースだかの顔を互いに拝むことになっただけで。俺も蓋を開けるまで山之辺のことも何も知らされてなかった。スポンサーに踊らされたんですよ」
「だから広瀬くんに全部押しつけたってぇのか? 曲者の井上や川西、坊や一人であしらいきれるのか?」
「手におえなければ何か言ってくるでしょう」
 井上に川西だけではない、面倒なのは山之辺が絡んでいることだ。
 坂口と仏頂面の工藤がそんなやり取りをしているところへ、良太が戻ってきた。
「何だ、また奴ら何か言ってきたのか?」
「あ、ええ、まあ。何とか納得していただきましたけど」
 工藤の問いかけに、坂口の前なので良太はあたりさわりない答えを返したが、坂口と工藤はかなり重要なことも共有している間柄のようだと良太は二人のようすから感じていた。
「ほう、工藤の出る幕もないってか? 頼もしいな」
「とんでもない、俺なんかまだ……」
 良太は座りしな坂口に答えながら、工藤の横顔をチラリと見やる。
「それで、具体的にどこまで進んでるんです? キャスティングは考えているんですか?」
「まあ、MBCの佐橋には話は通してあるんだが……キャスティングはこれからだな。とにかく宇都宮くんの承諾を得ないことにはとね」
「承諾っていうか、拒否権なしってやつでしょ?」


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