逢いたい17

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 工藤に伺いを立てるまでもなく、良太は仲居を呼ぶとタクシーを呼んでもらうと同時に清算を済ませた。
 外に出た途端すさまじい雪に吹きつけられ、良太はそこが北海道だったことを思い出した。
 吹雪の中、二台のタクシーに別れ、良太は宇都宮と後ろのタクシーに乗り込んだ。
「何か広瀬くんて、見かけによらずできる人なんだね」
 一体どこに行くのだろうと前のタクシーのテールランプに目を凝らしていると、隣に座る宇都宮がそんなことを言った。
「え、俺なんか全然、そんな……あ、さっきの坂口さんにいきなり振られて、俺、ひとみさんくらいしか知らなかったんでつい口にしてしまっただけで、いや、どうしよう、俺のせいでひとみさんのスケジュールに支障がでるようなことになったら……」
「ひとみさんと親しいんだ?」
「え、いや、それこそ、とんでもないです」
 良太は思い切り否定する。
「工藤とは昔からその仕事仲間なので、俺も顔を合わせているくらいで」
「ふーん、だったら坂口さんもひとみさんのことよく知っているみたいだし、心配することはないよ」
 その時気づいたのだが、宇都宮の深いバリトンの声は穏やかで相手を不思議に安心させるようなものがあった。
 舞台をやっているから発声も違うのだろうが、良太はこれが役者というものなんだとあらためて思う。
 坂口と工藤を乗せたタクシーはやがて札幌でも名の知れたホテルのエントランスに乗りつけた。
「さては上のバーに行くんだな。この天気だからそう動かない方がいいかもね。ここに泊まってるんだよ」
「あ、そうなんですか」


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