逢いたい20

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 高層階にあるバーに入った四人は、VIP席だろう奥へと通された。
 もちろん一人が宇都宮とわかったからだろうが、工藤なども負けじと一般人ではないオーラをビシバシ放っているのだ。
 宇都宮さんは変装でもすればお忍びで行動も無理ではないかもしれないが、工藤は無理だろうな、どんな変装してもぜってーバレバレ。
 良太は何となく二人を見比べながらそんなくだらないことを考えていた。
「あ、そうか! 思い出したぞ」
 宇都宮と坂口はウイスキー、良太は工藤に倣うようにラム酒をもらい少し舐めたところで、急に坂口が良太を見て言った。
「どこかで見たと思ってたんだ、確か、君、以前、ドラマに出てただろう? 中川アスカの、チョイ役だったが妙に新鮮で俄かに騒がれたが、工藤の事務所に問い合わせたら海外に行ったとか何とかで、そのまま噂も立ち消えになったが、あれ、広瀬くんだったのか」
 いきなりの指摘にうっかり呑み込もうとしたラム酒にむせ返りそうになる。
「えっ、いや、あの、あれは………」
「単なるピンチヒッターですよ。怪我をした役者の」
 しどろもどろの良太に代わり、工藤がきっぱりと答えた。
「にしちゃ、結構いいセンいってたぞ。だから芸名が役そのものだったのか。もうやらないの?」
 忘れていた古傷に塩を塗るように坂口が詮索してくる。
 工藤の機嫌がこれ以上悪くならないうちに切り上げたい話題なのだが。
「こいつに役者なんか無理ですよ」
 案の定工藤の口調が尖ってきたのを良太はヒシヒシと感じる。
「ほう? 何だか天下のプロデューサー工藤高広の台詞とは思えないな」
 口元には笑みを浮かべながら尚も探るような眼で、坂口は工藤を見つめる。
 坂口の言わんとしていることは、工藤にも伝わった。
 人を見る目に長けている坂口のいいセンいっていたは、そうそう耳にできる言葉ではない。
 これまでもその眼力でダイヤモンドの原石を何人も見つけてはブレイクさせてきた。
 下手くそでも何か持っている、良太のそんなところがたかだかピンチヒッターのチョイ役でしかなかったのに騒がれた所以なのだ。


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