逢いたい21

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 実際工藤も、その時まで良太にそんな資質があろうなどとは思いもよらなかったのだが。
 もしあれが良太という存在でなければ、工藤にしても秘書やプロデュースなんかの仕事を押しつけたりする前に、とっくに役者として売り出していたはずだ。
「まだとても社長の足元にも及ばないんですが、俺、プロデュースの仕事していきたいと思ってるので」
 とりあえず、もうこの辺にしてほしいと、良太はきっぱりと言い切った。
「そうか、君の意志なら仕方ないな、いい役者になると思ったんだがな」
 まだ言ってるよ、と頭の中で愚痴りながら良太はついグラスを空けてしまう。
 それを見た坂口がたったかおかわりを注文し、良太は苦笑いでそれを押し頂いた。
「そういや君の方のスケジュールは大丈夫なのか?」
「今さらですよ、坂口さん」
 コクリとグラスを傾けた時、良太は坂口と宇都宮の会話が少し遠ざかった気がした。
 何時頃だろ、このホテルに着いたのが確か十時前だったから、そろそろ十一時ってとこかな。
 もともと余裕をもって日程を組んでいたから、飛行機は昼過ぎにの便だ。
 今夜はホテルでゆっくりしようなんて思っていたのだが、どうやら部屋に戻って寝るだけになりそうだ。
 良太はそんなことを考えながら、自分では気づかずにコックリし始めていた。
 工藤が思わず眉を顰めたのは、良太が隣に座っている宇都宮の肩に少し凭れるようにして船を漕ぎ出したからだ。
「申し訳ない、おい、良太」
 コの字になったソファの向こう側に良太と宇都宮が座り、こちら側に坂口と工藤が陣取っている。
「構いませんよ、俺らが振り回したから疲れてるんじゃないですか」
 宇都宮は気にもせず、良太に肩を貸したままグラスを傾ける。
「ちょっと失礼」
 限界は工藤の方だった。
 こっちは構うんだよ。


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