逢いたい26

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 時間は人の思いなんかそっちのけで過ぎていくし、どんなにこのままずっとこうしていたいなんて言ってみたところで、無慈悲にも朝はくる。
 ほんと、沢村の気持ちが嫌ってほどわかるって……
 やたら眩しい光に目が覚めた良太がむっくりベッドに起き上ると、工藤はとっくにルームサービスでとった朝食を済ませ、きっちりと身だしなみも整えて窓際のソファで新聞を読んでいた。
「おはようございます」
「食うか? 冷めたから取り換えさせるか」
 テーブルの上の朝食を指示して、工藤が聞いた。
「いいです、それ食べますから」
 良太は慌ててベッドの上に引っかけてあったバスローブを引き寄せて羽織ると、バスルームに飛び込んだ。
 歯を磨き、顔を洗った良太がふと鏡を見ると、あちこちに派手に残された昨夜の痕に気づいて赤面せざるを得なかった。
 なんか夕べ、工藤、無駄にエロくて、しつこかったよな………
 お蔭でまだ身体は自分のものではないみたいだ。
 時間はとっくに十時を回っていた。
 とにかく身支度を済ませると、良太は工藤の向かいに座って冷えたオムレツをつつく。
 温野菜のサラダもクロワッサンもなかなか美味しくて、ポットに入ったコーヒーはまだ温かかった。
 何も言わずただ新聞に目を通しているだけだが、そんな工藤とこうして共有できる時間が少なくなりつつあるのが惜しくて、良太はゆっくりとコーヒーを飲む。
 でもこれから工藤ヨーロッパ行っちまうし、朝のコーヒー一緒に飲むなんて当分ないよな。
 心の中で呟いた朝のコーヒーなんていう古めかしくも定番な言葉に、かえって良太はこっそりまた頬を赤らめて恥ずかしくなる。
 昨夜、宇都宮と思いがけず野球談議で盛り上がり、日がな一日真っ黒になって野球三昧だった子どもの頃の自分を思い出した。


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