ある日の午後5

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「いつも睨みつけてるみたいな強面のコウさんが、ターくんに告白し、それを知ったミッシーが負けてなるかとターくんに告り、ターくんがどちらか決めるまで双方とつき合うことになるの」
 一瞬、コメディに流れていきそうなストーリーを、笑わないコウさんを作った生い立ちが辛うじてとどめる。
「福岡で早くに父親を亡くして女手一つで育ったコウさんは、貧しくても愛情あふれる母親と過ごした故郷を忘れられないの」
 バイトをしながら大学を卒業したコウさんはまだ中堅どころだった食器メーカー「ローズマリー」に就職し、その手腕を社長に認められてその娘と結婚するが、愛情はなく、ひたすら会社を大きくするために尽力し、やがて「ローズマリー」の社長になるが、横浜支社を訪れた時、近くにある老人ホームに入居する老婦人の犬が迷子になりそれを懸命に探し出したターくんに出くわす。
「ターくんはボランティアで老人ホームのイベントにも参加したりして、入居者にはとても慕われてたの。そんなターくんの笑顔に、コウさんは生まれて初めての恋をしたのよ」
 妻とは離婚、社長の椅子を妻に譲り降格人事で横浜支社長となって、コウさんはターくんの元にやってきた、というところから真面目な恋物語が始まり、ターくんもコウさんと一緒に山にハイキングに行ったりしているうちに、コウさんの寂しさや温かさを感じ取り、コウさんが笑顔を見せるようになったと会社でも評判になる。
「そんな時、ミッシーのパリ支社栄転の辞令とともに、ターくんともう一人の同僚のどちらかをパリ支社にという打診があるのね。先にパリに発つけど、一緒にパリに行ってくれるなら見送りに来てほしいって、ターくんに言うんだけど、ミッシーもターくんに必死で、ターくんのチャンスをつぶさないでほしいって、コウさんに訴えるのよ。そしたらコウさんがさ……」
 ここでアスカは少し涙声になる。
「ターくんに妻と復縁することになったってウソ言って、ミッシーとパリ行けって」
 既にコウさんを好きになっていたターくんは泣きながら背中を向けるが、翌日、老人ホームから犬の飼い主の老婦人が亡くなり、それが実はコウさんの母親だったことを知ると、いてもたってもいられずにコウさんの元に駆けつける。
「ワンコがね飛び出してきて、ターくんを出迎えたコウさんに、ターくんが言うの! 自分があなたを待っているから、って」
 で、ドラマはハッピーエンドで終わる。
「はあ……………………………………………………………………なるほど、それでパリ行きはやめたんですか」
「パリなんか行こうと思えばいつだって行けるのよ! ってか、ここはパリとかどうでもよくて、二人の気持ちが結ばれるってとこが重要なんじゃない!」


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