ある日の午後7

back  next  top  Novels


 あの京助って、そういう人だったのかと、良太は少々驚いた。
「ほんとよ! 私もその場でちゃんと聞いたわよ。家族にはとっくに話しちゃってたから問題はないんだけどね」
「問題、ないんですか?」
「ないでしょ、あの家族は。とにかく、京助のことなんかどうでもいいけど、うかつにしゃべらせると、千雪の立場ってものがあるじゃない? それが心配なのよ」
 そうだろう。
 人と違ったことをして認めてもらうというのは、この日本ではかなりな覚悟がいる。
 真実を証明するのが常に正しいかといえば、必ずしもそうではないこともある。
 ましてや知名度が高ければ尚更だ。
 沢村も、ともすると危ないかもしれない。
 酔っていたとはいえ、佐々木さんのためなら野球なんかやめる、なんてことも口走るような奴だ。
 そういえば、沢村はちょくちょく佐々木家に出入りして、佐々木さんのお母さんに取り入ってるらしいけど。
 結構、佐々木ちゃんママも沢村っちのこと気に入ってるみたいよ、とは、佐々木オフィスの直子の話だが。
 それでうまくいけば、いいよな。
 良太は思う。
 佐々木さんのお母さんが沢村のこと、認めてくれたり、すれば。
 京助のことはちょっと見直したかもしれない。
 傲慢で自己中だと聞いたから、二人の関係なんかひた隠しにしたいのではないかと。
 けど、勝手な思い込みと真実は得てして違うもんだな。
 彼らの物語も、二人は幸せにくらしましたとさ、めでたしめでたし、という言葉でくくられるのなら、どんなにいいか。
 ひょっとしたら、それもありかもな。
 彼らなら。
「そろそろ出かける時間だ」
 秋山が言った。
「ええ? もう?」
 ぶーたれたまま、アスカは秋山と一緒に出掛けて行った。


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ