ある日の午後9

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「あれ、でも、今日って接待じゃなかったんですか?」
「ちょうどアスカの撮影待ちだって秋山が連絡してきたから、あいつに任せてきた」
「任せてって、押し付けただけじゃ……」
 接待が嫌いな工藤のやりそうなことだと、こそっと口にした良太に、「何だ?」とすかさず工藤が突込みを入れる。
「いえいえ」
 ジロリとひと睨みする工藤の携帯が鳴った。
 最近よく話しているのはオーストラリアの代理店担当者だ。
 今度はまたオーストラリアに出張とかだろうな。
 今日はもうこれでキリをつけようと、良太はパソコンをオフにして立ち上がった。
「良太、メシ、行くから待ってろ」
 電話の途中で工藤が言った。
「え、はい! じゃ、ちょっと俺、にゃんこにご飯やってきます!」
 慌ててオフィスを出てエレベーターを待ちながら、良太は「これってなんか……」と口にする。
「俺って、円卓の騎士でも舎弟でもなくて、ご主人様の帰りを喜んでるただのワンコじゃんね」
 自嘲してみるものの、「ま、いっか」と呟いたその表情には、つまらないことはスパッと忘れようとばかり笑みが浮かんでいた。

- おわり -


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