花を追い16

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 下柳をずっと待たせておくわけにもいかず、良太はお茶を飲み干すと、カップは片づけるからという鈴木さんに任せて、自分のデスクからタブレットと書類を持って下柳のところへ移動した。
「へえ、その内野って先生、結構あちこち行ってんじゃねーか。こりゃ話も合うかもな」
「きっと合うんじゃないですか? 体つきはそう大きな人じゃないけど、躊躇なくどこへでも行くって感じ」
「ほう? 頼もしいんじゃね?」
「一度顔合わせしてもらいますから、その時にまた……そういえば有吉さん、もう部屋決まったんでしたっけ? 別件で一週間ほどオーストラリアって話でしたけど、帰ってきたんですよね?」
「おう、それそれ」
 下柳はまたにやりと笑う。
 有吉はつい最近、知らないうちに撮影したショットに写っていた男が原因で妙な事件に巻き込まれ、自分の部屋を燃やされるという被害にあっていた。
 一時は既に撮影済みのデータが燃やされたかと心配したが、有吉は自分でもデータを持ち歩いているし、クラウドサーバにバックアップしていたので事なきを得た。
 それはよかったが、車に積んでいた機材を除いて何もかも燃えてしまったため、しばらくホテル住まいだった。
「なんてーか、例の市川さんが有吉のために便宜を図ってくれて、あいつ、昨日だか新しい部屋に落ち着いたみてぇだぜ?」
「そりゃ……、よかった」
「なに、良太ちゃん、市川さんにちっとは気があったんじゃねーの?」
 揶揄されて、良太はぶんぶんと首を横に振る。
「とんでもない! 収まるとこに収まったってことですよね? 市川さん、それこそ噂になっても構わないって感じだったし。これで有吉さんも心置きなく仕事に専念してもらえるし」
 今の良太にとっては一つでも懸念材料が減ってくれることが何よりありがたかった。


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