花を追い18

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 坂口が仕事部屋にしているマンションを訪れた良太に、妙に機嫌よさげにコーヒーをいれてくれた坂口は、昨今の世情が侘しい、テレビ離れが進むのは若い奴らの心が殺伐としているからだなどと三十分ほど持論を吐きまくってなかなか本題に入ってくれなかった。
 それでも良太が少しイラついているのに今更ながらに気づいたかのように、坂口は目の前に横たわっている難題についてようやく切り出した。
「は? 日下部が降りるって、だってスポンサーの一押し……」
「それがな、つい昨日になって、日下部の事務所から降板の申し出があってよ。手ぇ回して調べたら、日下部と竹野紗英、こっそりつき合ってたってさ。んで、またこれが竹野に手ひどく振られたみてぇで、事務所も日下部のようすがおかしいってんで問いただしたら日下部が吐いたと。事務所側は売り出し中の爽やかイケメンが手籠めにされたみたく怒りまくりだったらしいぜ」
「はあ………」
 良太にはそれしか言葉が出てこなかった。
 坂口は禁煙しようとしているらしく、むやみに電子タバコを噛む。
 よく共演×の俳優がいるとは聞くが、それにしてもこのドラマは出だしから前途多難すぎる。
 さらにクランクイン間近にしてこの体たらくだ。
 むしろ竹野を降ろした方がスムースに行くのでは、とは口から出かかるのを良太はかろうじて止めた。
「竹野降ろした方が早いってんだろ?」
 アームチェアをくるりと回転させて、坂口が良太に顔を向けた。
「え? いや、あの」
 今しがた考えていたことを言い当てられて、焦って良太は口ごもる。
「まあな、俺もそれが一番いいと思うぜ? ま、彼女の代わりにヒロインやってくれる子がいればの話だがよ~」
「はあ~」
 良太はがっくりした顔を隠すこともせず、苦笑いした。


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