花を追い27

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 バレエができる女子大生というのが、オーディションの条件となっていたが、幸いにも奈々は小学校の頃からバレエをやっていたので、立ち居振る舞いや歩き方もきれいだ。
「頑張って」
 会場に入っていく奈々を見送ったところで、谷川から連絡が入り、やはり予防接種を受けてない型のインフルエンザなので、ちょうど奈々のオフに合わせて休むということだった。 
ようやく一つため息をついて、エレベーターホールの近くにあったラウンジへと良太は戻ろうと、リュックを引っ掛けなおした。
「あっ、ちょっとちょっと、君」
 後ろから男の声がしたが、まさか自分のことだとは思わず歩こうとした良太は、いきなり腕をつかまれた。
「ちょっと始まっちゃってるよ、オーディション! 早く、こっちこっち!」
 は?
 男は年の頃は六十代だろうか、ジーンズに派手なシャツを着ているが若作りという感じはない。
「おーい、この子、見てやって」
 バン、と開かれたドアの向こうにはずらりと業界人風からスーツのビジネスマン風まで十人ほどの男女がテーブルを前にして座り、その前には一人の若い男が立っていた。
壁際に並んで座っている数人の若い俳優たちも、数人の男女も室内にいる全員の視線が良太に注がれた。
「え、先生、この子が最後ですよ」
 ぽつんと一人立っている青年を指して誰かが言った。
「ちょっとばかし遅れてきたって、かまわないだろ。この子だよ、俺の探してた感じそのものなんだ」
 しばし言葉が出てこなかった良太だが、ようやく何か間違われて連れてこられたらしいと察した。
「あ、違います違います! 誤解です! 俺、青山プロダクションの……」
「やっぱり! このオーラ、ただものじゃないと思ったよ!」
 またもやハトマメの良太の言葉をさえぎって、先生と言われた男が良太に向き直った。
「君、あのCMと中川アスカのドラマに出てた子だろ!? 青山プロダクションに電話で問い合わせたら、ニューヨークに修行中とかって、帰ってきたわけだね?」
 はあああああ!?


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