花を追い30

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 ふと視線を感じて顔を上げた良太は、竹野をじっと見つめる本谷に気づいた。
 うわあ、ちょっとこれ、どうしたらいいんだよ? なんでまた絡みの中心が工藤になってんだよお!?
 何やらこの先、出港したばかりのこの船に、スムースな航海とは程遠いものを感じないではいられない。
 それでおそらく、そうしたあれやこれやをうまく収めるべく動くのは当然、良太であろうことも。
「良太ちゃん、この後ちょっと時間ある?」
 頭の中が混乱を極めていた良太は、急に耳元に振ってきた深いバリトンにはたと顔を上げた。
「宇都宮さん」
「ちょっと相談があってね」
「え、あ、はい、えっと」
 意外な申し出に、良太はスマホを取り出すと軽くスケジュールをチェックした。
 谷川の件もあり、ドラマの制作発表に工藤の代わりに同席しなければならなかった良太は、今日入っていた予定を思い切ってずらしたので、あとは事務所に戻るだけのはずだった。
 なんだかだで既に六時になろうとしていた。
「はい、大丈夫ですが」
「この上に、割と居心地のいいレストランバーがあるんだ。そこでいいかな? 軽くメシでも食いながら」
「あ、はい」
 何だろうと思う。
 キャスティングにはすったもんだあったし、宇都宮も色々と何か感じているところがあるのかもしれない。
 座長の宇都宮に気持ちよく仕事をしてもらえるよう計らうのもプロデューサーの仕事だし、ここはしっかりしなくては。
 良太はひとりコブシを握って気合を入れると、宇都宮の後に続いてエレベーターでレストランバーのある十七階へと向かった。
 案の定、通されたのは個室だった。
 窓の外には宵闇が降りてくる手前の藍色の空に浮かぶ月と林立するビル街の煌びやかな灯が広がっている。
「嫌いなものある? 車だったよね」
 柔らかい笑みを浮かべ、宇都宮が聞いた。
「え、特にはないです」


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