花を追い31

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「だったら俺のおススメでちゃちゃっと頼んじゃっていい?」
「あ、はい」
 こじんまりした空間だと宇都宮のバリトンがまたさらに心地よく響く。
 いったい宇都宮のような大物俳優が相談というのは何だろうと良太は頭の中でああでもないこうでもないと考えていた。
 その間に、宇都宮が頼んだトマトとチーズのカプレーゼ、シーザーサラダ、グリルチキン、和牛のタリアータなどがテーブルに並べられていく。
 宇都宮はワイン、良太の前にはシャーリーテンプルが置かれた。
「ノンアルカクテルだから遠慮なくどうぞ」
「いただきます!」
 さっきから目の前に並んだ美味しそうなにおいが鼻を刺激して、良太は一気に空腹を思い出した。
 宇都宮はオーダーした時同様、皿にたったか取り分けて良太の前に置いた。
「工藤さんまだオーストラリアだって?」
「はあ、CMの仕事が急遽決まって」
「しかしほんと忙しい人だよね。それに比例して良太ちゃんも仕事が増えてく?」
「え、いや、まあ、比例するわけじゃないんですが、うちは何しろ、色々事情もありなので、万年人手不足って感じで」
 言ってしまってから、当然宇都宮も工藤の事情を知っているんだよな、と良太ははたと考える。
「なるほど、難しいとこだよね〜。そういや、昨日、良太ちゃん、楠先生にスカウトされそうになったんだって?」
 良太は目を丸くする。
「な、んで、そんなこと知ってるんですか?」
「坂口さんが夕べ飲み屋でばったり楠先生に会って愚痴られたんだってさ」
 笑いながら宇都宮が言った。
「え………、いや、参りましたよ、だって急遽南澤のつきそいで行ったオーディション会場で、あの人につかまって、俺が社長秘書ですって名刺出しても、そんなの関係ないって感じで」
 お蔭で奈々を送って帰ってくると、猫たちの相手も早々にバタンキューだった。


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