花を追い32

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「業界人って常識通用しませんよね〜」
 ぼそっと言ってしまってから、はっと気づいて、「いえ、宇都宮さんは違いますよ、ちゃんと言葉が通じるし」と慌てて訂正する。
宇都宮はくくくっと笑う。
「言葉が通じないか、わかるよ、それ」
 その時、良太のスマホが鳴った。
 電話ではない、デザイナーの佐々木の事務所にいる直子からのメールだ。
 仕事やプライベートで何かと情報交換している頼もしい友達だ。
『なんかさっそくSNSで拡散してるよ、竹野紗英が工藤さんに振られて泣き喚いてるとか』
 動画へのアドレスつきで送られてきたメッセージだ。
「え、何だよこれ?」
 思わずアドレスをタップすると、先ほどホテルの廊下で喚き散らしていた紗英の画像と、思わせぶりな内容のフレーズが並んでいる。
「どうしたんだ?」
 宇都宮も訝し気に聞いてきた。
 良太がスマホの画面を見せると、「ああ、これ、内通者がいるんだよね、きっと」と宇都宮が言った。
「内通者?」
「いやそういうと語弊があるかもだけど、何でも今はネットで情報合戦だろ? 面白がってか、竹野をよく思わないやつか、はたまた何でもドラマの宣伝にしちまおうって、スタッフとか」
「魑魅魍魎の世界だ」
 ついつい良太は口にしてしまう。
「工藤さん、いい迷惑だよな、会ったこともないんだろ?」
「多分」
「モテる人は苦労するね」
 とかなんとか言っている宇都宮こそ、あれやこれやとマスコミに取り上げられるし、鵜の目鷹の目で宇都宮の新しい相手を探している連中につけまわされている。


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